あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
「ごめんなさい」


「そうやってまた謝る。今からでいいから、ちゃんと慶都って呼んでほしい」


「わ、わかりました」


「いい子だ。これでお互い名前で呼び合える。さあ、呼んでみて」


「えっ! 今ですか?」


「ああ、もちろん」


「あっ、えっと……」


「恥ずかしがらないで」


「は、はい……け、慶……都さん」


「いいね。彩葉、これからはちゃんと慶都って呼ぶこと」


私はうなづいた。


慶都さん……は、私を「彩葉」と呼び、妹を「麗華ちゃん」と呼ぶ。


それは私が好かれてないからなの? って、ちょっと思ってた時期がある。


私は、正当な一堂家の人間じゃないから。


だけど、慶都さんはそんな風に身分で人を判断するような人じゃないって、今はわかってる。


「待ってるから、必ずまた連絡して」


私達はカフェを出て、車でまた保育園まで戻った。


雨は……まだ止まない。


激しくも緩やかにもならず、一定のペースで降り続いてる。


「ありがとうございます、また保育園まで戻って頂いて」


「気にしなくていい。今度は、雪都に会えるのを楽しみにしてるから。じゃあまた」


慶都さん……


まだこんなにも胸が熱いよ。


ずっとずっと止まらない鼓動。


私、今日、あなたに会えたこと、素直に喜んでもいいですか?


私は、そう疑問を投げかけながら、慶都さんの背中に一礼した。
< 59 / 235 >

この作品をシェア

pagetop