黒幌に呑み込まれる
「だって俺のこと、散々“ウザい”“キモい”“トロい”って言って罵倒してたのに、今日“私も行くー”って……
先輩の方が、キモいです。
渡辺(わたなべ)先輩(美乃の苗字)もそう思いません?」

「え?あ、そ、そうかな?」

「は?」
「え?」
「渡辺先輩も、俺のこと“暗い”“キモい”っつってたじゃないですか。
なのに、これは“キモい”とは思わないんですか?」

「あ、それは…」

「まぁ、いいや!
麦倉先輩、ちゃんと食べてます?」
「え?あ、うん」

「早く食べて、会社に戻りましょう!
俺は、麦倉先輩と話したくて誘ったのに、邪魔な奴がついてきたから」

そして食べ終わり━━━━━━
「あ、麦倉先輩はお金いらないですから!」
「え?だ、ダメだよ!!」
神楽は千円札を出し、真幌に渡す。

「いりません!」
「ダメ!!
しかも、なんで私だけ?」

「え?俺は、麦倉先輩と食べたくて誘ったんですよ?
久我先輩と、渡辺先輩は“勝手に”ついてきたんですから!
━━━━━━━つか!!
なんで、この俺が、金払わなきゃいけねぇの?」
また、黒く染まる真幌の雰囲気。

「え……黒部く…」
神楽はビクッと震え、思わず後ずさった。
美乃と久我も、ただただ驚き怯えていた。

「あ、ごめんね!麦倉先輩!
怖がらせるつもりはなかったんですよ!」
真幌は慌てて、神楽の顔を覗き込み謝るのだった。


そして、仕事が終わり━━━━━━━

「先輩!!帰りましょ?」
「あ、うん」

さりげなく神楽の手を握る、真幌。
そして、手を引いた。

「あ、あの!黒部くん!」
「ん?何ですか?」

「手…/////」
「あ、嫌だったですか?」
「う、ううん」

「じゃあ…指絡めていいですか?」

「あ、うん…」
指を絡めると、心臓がうるさいくらいにバクバクしだした。
何故か、真幌に愛撫されているように身体が熱くなっていく神楽だった。


「黒部くん」
「ん?」

「黒部くんは、二人いるの?双子とか」
このまま食事に誘われ、街中をゆっくり歩く二人。

神楽は、真幌を見上げ言った。

「まさか!俺が二人いたら、大変ですよ?(笑)」

「だよね……
じゃあ、どっちが黒部くんなの?
今までの黒部くんと、今日の黒部くん」

「それは……
先輩の返事を聞いてから、教えます」

真幌は、微笑み言ったのだった。
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