熱く甘く溶かして
* * * *

 松尾からの電話を切ると、日比野はニヤッと笑う。そして頭の中でいろいろな考えを巡らせながら、智絵里のいる受付へと戻って行く。

「あっ、おかえりなさい。電話、大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫よ。ありがとう。ところで智絵里ちゃんさ、今夜って予定ある?」
「いえ、特にないです」
「じゃあさ、せっかくの金曜日だし、飲みにでも行かない?」
「……私飲みませんよ」
「いいよ。あっ、前にホッケが美味しかった居酒屋にしようよ! 智絵里ちゃんの好きなイカの姿焼きも特大で感激してたよね〜」

 日比野が言うと、智絵里は目を輝かせて笑顔になる。

「あの店なら大歓迎です! 是非行きましょう!」

 よし、かかった。嬉しそうに仕事を再開した智絵里を見ながら、日比野は松尾にメールを送る。

『作戦成功。今夜、駅前の居酒屋にて決行』

 するとしばらくしてから返事が届く。

『個室を二部屋予約済み。どちらか一方に入られたし』
『了解』

 うふふ。まさか私と松尾さんがオンラインゲーム仲間とは思わないでしょうね。

 何も知らずに喜ぶ智絵里を見ながら、日比野はほくそ笑んだ。
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