熱く甘く溶かして
 智絵里を部屋に残して、恭介と松尾は車へ戻る。

「今日はありがとうございました。これ、少しだけどお礼です」

 恭介は日本酒の一升瓶と、おつまみ数種類が入った袋を手渡す。それを嬉しそうに受け取ると、松尾はニヤニヤしながら恭介を小突く。

「なんだかんだ、やっぱり畑山ちゃんのこと引きずってたんだなぁ。どうりで今までの恋愛が上手くいかないわけだよ。あんなに息ぴったりのだもんな」

 恭介は気まずそうに頭を掻く。

「松尾さんには本当に感謝してます。あれがなければ智絵里と再会出来なかったし、会ったとしても話すことなんて無理だったと思う」
「おうおう、もっと感謝しろ! でも一晩で友情が愛情に変わるとは思わなかったよ」
「まぁ……どっちの情も紙一重なのかもしれませんね」
「そうかもな。なんてったってあの畑山ちゃんをその気にさせられたんだぜ。もしかしたら友情の陰で、同時に愛情も育っていたのかもな。あの篠田がこんなに必死になる姿、会社のみんなに見せたいなぁ」
「あの……一応プライベートなことなので内密にしていただきたいんですけど……」
「そうなの? まぁ仕方ないか。また畑山ちゃんとの惚気話(のろけばなし)でも聞かせろよ! なんかキュンキュンしちゃうんだよ〜」
「松尾さん、相変わらず心は乙女ですね」

 松尾は恭介の肩を叩くと車に乗り込む。走り去る車を見送ると、恭介は小走りに部屋へと戻った。

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