熱く甘く溶かして

「まずはさ、気心の知れた友人と同居くらいのスタンスから始めようか。高校時代に戻ったみたいにさ」
「……恭介は自分の生活に私が入ることに抵抗はないの?」
「うーん、思ったほどはないかな。人といることは別に嫌じゃないし。でも逆に智絵里は一人の時間を大切にするタイプだろ? 高校の時もさ、俺がいるのに音楽聴き始めたらガン無視だった。懐かしいなぁ」
「……わ、悪かったわね……」
「今も音楽好きなの?」
「……好き」
「じゃあ聴いてる時はガン無視決定だな。まぁそういうのも慣れてるから気にしないけど」

 恭介の淹れてくれた紅茶を口にする。甘くてホッとする味だった。

「飲み終わったら、買い物に行こう。智絵里の日用品とか、かわいい服を買い足してもらわないと」
「……恭介の好みで買わないからね」
「よし、智絵里に着て欲しい服を俺が買う。クローゼットいっぱい、俺好みにしてやろう。楽しみだなぁ」
「……言ったわね。じゃあクローゼットいっぱい買ってもらおうっと」
「お前……ああ言えばこう言う……」
「お互い様でしょ」

 そう言いながら二人は吹き出す。

「よくこんなふうに言い合ったよなぁ」
「そうだね。私たちは結構楽しんでるんだけど、周りのみんなは心配しちゃって」

 恭介は智絵里に手を差し出す。

「今日からよろしく、智絵里」
「……うん、よろしくお願いします」

 恭介の手を握り返すと、智絵里はようやく笑顔になった。
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