熱く甘く溶かして

「いらっしゃーい、智絵里ちゃん! 久しぶりだね〜」
「ご無沙汰してます! 突然すみません」
「大丈夫だよ。一花も智絵里ちゃんに会いたいって言ってたからさ。産まれるとなかなか会えなくなっちゃうしね」

 その男性を見た時、恭介はどこかで会ったことがあるような気がした。それは相手も同じだったようで、お互いを観察し合う。

「智絵里ちゃん、こちらの方は?」

 すると智絵里は楽しそうに声をあげて笑い出した。

「やだぁ、先輩。覚えてないですか? 昔一花のことで横恋慕されたじゃないですか」

 智絵里の言葉を聞いて思い出した二人は、驚きの声を上げる。

「……思い出した! あの時の!」
「あ、あ、あの時は大変失礼いたしました!」

 その時男性の背後から、お腹の大きな女性が歩いてくる。

「なかなか入って来ないし、大きな声が聞こえたけど、どうかした?」
「く、雲井さん⁈」

 恭介に言われ、彼女はびっくりしたように頬を赤くする。

「なんか旧姓で呼ばれると照れるねぇ。もうずっと千葉さんだから」
「一花!」
「いらっしゃい、智絵里と篠田くん。どうぞ中に入って。リビングは二階だから、階段気をつけてね」

 一花は二人を招き入れると、二階へ促した。
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