熱く甘く溶かして
 早川が真剣な目で智絵里を見る。

「今日蒔田から連絡があったんだ。杉山から畑山の職場を聞かれたって。蒔田は知らないと言ったが、別の職員が知っていたようで漏らしてしまった。だから俺たちは杉山を尾行することにしたんだ」
「そんなことが……」
「蒔田からそのことを篠田に伝えて欲しいって言われて、俺が夕方過ぎに連絡を入れた」

 智絵里は恭介を見る。

「……そのことを聞いて考えたんだ。あいつは何故智絵里に会おうとしてるのかって。クラス会の日に俺、あいつにすごい形相で睨まれたんだ。俺を牽制して、智絵里に会うということは、目的は一つしかない。でも九年前のあの日に智絵里は逃げた。何があったのかバレてるのは明白なのに、智絵里に逃げられない自信があるようにも思えて……」
「……何か私が抗えないものを持ってるって考えたのね」

 智絵里が言うと、恭介は黙って頷いた。

「……その通りよ。写真があった。早川くんは見た?」
「いや……」
「そっか……見て欲しくないけど、あれがきっと証拠になるのね……」

 悔しそうに智絵里は唇を噛み締める。

「恭介は私を守ろうとしてくれたんだよね……。でもそれなら言ってくれれば良かったのに……」
「杉山が来るか確証がないのに、お前を不安にさせるのはどうかと思ったんだ……」
「言ってくれたら回避出来たかもしれないじゃない……」
「うん……そうだよな……ごめん……」

 二人の間に不穏な空気が流れる。それを察し、早川が口を開く。
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