年下の彼は、なぜだか私にZokkonです。
「樹……」

そんなに私のことを想ってくれてるのかと思ったら、胸が詰まった。



諦めたつもりだったのに、また樹への気持ちが頭をもたげて来る。



(だめだ、もう遅い。
陽のお腹には、樹の子供がいるんだから…)



私は、残酷な現実を思い出した。



「仕事はやめちゃだめだよ。」

これから、陽と子供を養っていかなきゃならないんだからね。



「だけど……」

「とにかく、明日、三人で会いましょう。」

そこで、陽に子供のことを話させる。
そしたら、樹も気付くはず。
どうすることが正しいのかを。



「そうだな、そうしよう。」

「じゃあ、私、帰るね。」

「えっ!?泊まっていかないの?」



そんなこと、出来るわけがない。



「今日は疲れてるから。」

「疲れてるなら、なおさらここに泊まれば…」

「自分の家じゃないと落ち着かないのよ。」

「……じゃあ、送って行くよ。」

「ひとりで大丈夫よ!」



そう言ったけど、樹は着いてきた。
特に何も話さず、手を繋ぐこともなく…



「気を付けてな。」

「うん、ありがとう。」

「恵理子…」

「な、なに?」

駅の改札の前で、樹が突然私を抱き締めた。



「覚えておいて。
俺が愛してるのは恵理子だけだから。」



私の耳元で樹はそう呟くと体を離した。
私は何も言わず、改札を通り、後ろは一度も振り向かなかった。
私の頬には涙が流れていたから。



(さようなら、樹……)




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