友達、時々 他人
「ま、先輩後輩としての付き合いは長いんだから、余計なお世話かもしれないけど」と言った龍也は、すごく楽しそう。

「そんなこと言われたら、余計に迷うんじゃない?」

「おススメは焼肉だって言っといた」

「えーーー。初デートで焼肉?」

 さっきの麻衣の服装を見たら、焼肉はないんじゃないかと思う。

「だから、だろ? 背伸びしない方がいいんだって」

「それって、経験?」

「気になるか?」と、龍也が少し得意気に私を見た。

「別に? けど、真っ白なブラウスを着ている彼女に焼肉は、ないかも」と、私はツンと目を逸らす。

「マジか」

「マジよ」

 格好つけても、つけきれないのが龍也。

「ま、嫌なら嫌って言うでしょ、麻衣」

「……だな」

「あ、在庫処分してる」

 今使っているノートパソコンも、在庫処分で格安で買ったものだった。五年位前に。

 その時は、勇太と買いに来た。

 勇太もパソコンを買ったけれど、在庫処分は嫌だと言って、最新モデルを買っていた。

「龍也は、型落ちして安いものより最新モデルの方がいい?」

「いや? 性能(スペック)次第だな。同じ金額なら、型落ちでも高性能(ハイスペック)な方がいい」

 些細なことだけれど、自分と龍也の共通点が、嬉しい。

「で? どんなんが欲しいんだ?」

「今のより小さくて軽いのがいいかなぁ」

 知らなかった。

 龍也がパソコン関係に詳しいこと。

 いや、知ってはいたけれど、こんなに詳しいとは知らなかった。

 展示品を一通り見て、パンフレットにも目を通して、店員さんにも話を聞いて。私は在庫処分品の中の、一番スペックのいいものでいいと思ったけれど、そこは龍也がこだわってしまって。

 結局、一時間ほどパソコン売り場に居座って、龍也が三台まで絞り込んだ。

 龍也が言うには、どれもスペックは同じだけれど、メーカーが違い、メーカーが違うと売りが違うという。

 動画を見たりテレビ代わりにするなら、コレ。音楽を聴くなら、コレ。とにかく軽いのなら、コレ。

 結局、私は軽いものを選んだ。

 在庫処分品ではなかったけれど、龍也が店員さんと交渉して、ポイントアップとシリコンカバーとUSBメモリをサービスしてもらうことに成功した。

 さすが、営業マン。

 知らなかった龍也の一面が見れた、一日だった。
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