絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 カチャン。

 その音で徳香ははっと目を覚まし、自分が裸であることに気付き、昨夜の出来事を思い出す。

 カーテンの外には薄明かりが差し始める。布団はまだ温かく、ついさっきまで信久がいたことを物語っていた。

 徳香は布団を体に巻き付けると、慌てて窓に駆け寄った。すると歩道を歩く信久の背中が見えたのに、彼は一度も振り返ることなく去っていってしまった。

「信久……」

 突然涙が止まらなくなり、徳香はその場に座り込んだ。

 どうしてそばにいてくれないの? いつまでもそばにいて欲しいのに……私は信久のそばにいたいよーー信久に執着しているのは徳香の方だったのだ。

 徳香はベッドに戻ると、頭から布団を被る。ほんのり信久の香りがするようで、切なくなった。

 彼と体を合わせている間、一体何度愛を囁いてくれただろう。そのたびに心が満たされていった。

 信久が与えてくれる愛情が心地良くて、いつまでもこの時間が続くことを願ってしまう自分がいたのだ。

 信久は私の中の壁を乗り越えると言っていた。でも本当はとっくに越えていたんじゃないかと思う。ただそのことに徳香自身が気付いていなかっただけ。

 だって信久にキスされることも、一つになることも、全然嫌じゃなかったの。むしろもっと欲しくて欲張りになってたーー大切な人だと言って曖昧にしてきた気持ちが、セックスをしたことでようやく確信へと変わったのだ。

 だけど信久はここにいない。大切なものがこの手からすり抜けて消えてしまった失望感に、徳香はただ打ちひしがれるしかなかった。
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