お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
『頑張ってね』
昨晩、俺の出向の話を聞いた後に雫は笑顔で言った。
『高晴さん、見込まれてるんだよ。何かあったとき名前を挙げてもらえるのは、社内的に重要な人間だと思う。ステップアップのチャンスになるよ』
明るく励ましてくれる雫は、何を思っているだろう。
仕事を辞めてついてきてほしいなんて、俺は絶対に言わない。雫だって希望の部署に配属され、今頑張っているところなのだ。俺のために辞めさせるつもりはない。
だけど、そうなれば離れ離れの生活が始まる。
『二年でも三年でも、きっとあっという間だよ。海外ってわけでもないし、その気になったら毎週末会えるじゃない』
雫の理解ある言葉を俺は喜ぶべきなのだ。寂しくないわけじゃないだろうに、健気で自立した彼女の態度は立派だ。
出向を受けると決めているのに、心はどんどん暗くなる。
夜、すっきりしない気持ちのまま帰宅する。すでに雫が夕食の準備を進めてくれていた。
「今日は高晴さんの好きなすき焼きでーす」
「雫だって好きだろう?」
雫はふふふと楽しそうに笑う。
「何か手伝うことはある?」
「高晴さんはお風呂掃除とお湯張りの係に任命しまーす」
「了解」
「ねえねえ、この前徳島先輩からもらったバスソルトを使っていい? ちょっと甘い香りなんだけど」
「いいよ。じゃあ、準備しておこうね」
いつも通りの会話。いつも通りの笑顔。
もう間もなく、何気ない日常はなくなる。
つい、ぼうっとしてしまう俺を、キッチンから顔を出した雫が見つめる。
「疲れたの? 高晴さん」
雫の笑顔が眩しい。
「いや、平気だよ。お風呂、洗ってくる」
そう言って彼女に背を向け、バスルームへ向かった。
昨晩、俺の出向の話を聞いた後に雫は笑顔で言った。
『高晴さん、見込まれてるんだよ。何かあったとき名前を挙げてもらえるのは、社内的に重要な人間だと思う。ステップアップのチャンスになるよ』
明るく励ましてくれる雫は、何を思っているだろう。
仕事を辞めてついてきてほしいなんて、俺は絶対に言わない。雫だって希望の部署に配属され、今頑張っているところなのだ。俺のために辞めさせるつもりはない。
だけど、そうなれば離れ離れの生活が始まる。
『二年でも三年でも、きっとあっという間だよ。海外ってわけでもないし、その気になったら毎週末会えるじゃない』
雫の理解ある言葉を俺は喜ぶべきなのだ。寂しくないわけじゃないだろうに、健気で自立した彼女の態度は立派だ。
出向を受けると決めているのに、心はどんどん暗くなる。
夜、すっきりしない気持ちのまま帰宅する。すでに雫が夕食の準備を進めてくれていた。
「今日は高晴さんの好きなすき焼きでーす」
「雫だって好きだろう?」
雫はふふふと楽しそうに笑う。
「何か手伝うことはある?」
「高晴さんはお風呂掃除とお湯張りの係に任命しまーす」
「了解」
「ねえねえ、この前徳島先輩からもらったバスソルトを使っていい? ちょっと甘い香りなんだけど」
「いいよ。じゃあ、準備しておこうね」
いつも通りの会話。いつも通りの笑顔。
もう間もなく、何気ない日常はなくなる。
つい、ぼうっとしてしまう俺を、キッチンから顔を出した雫が見つめる。
「疲れたの? 高晴さん」
雫の笑顔が眩しい。
「いや、平気だよ。お風呂、洗ってくる」
そう言って彼女に背を向け、バスルームへ向かった。