お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
「雫」

俺は彼女の名を呼び、抱き寄せた。涙のつたう頬に口づける。何度も何度も。そうして互いの唇を重ねた。

「俺もきみと離れるのがつらい。耐えがたいよ」

唇を離してささやく。涙に濡れた雫の瞳をまっすぐに覗き込んで。

「本当はきみを連れて行ってしまいたい。だけど、それが正解とも思えないんだ。きみにはきみの仕事と世界がある。きみは優しいから、俺を優先するだろう。そんなのは俺が嫌なんだ」

言葉を切って唇を寄せる。何度キスをしても足りない。彼女を放したくない。だからこそ、俺は告げる。

「二年、待っていてくれないか。また一緒に暮らせる日まで」
「高晴さん」
「寂しい想いをさせるけど、絶対に浮気なんかしない。仕事や体調で、きみに心配もかけない。週末は必ず戻ってきて、きみと過ごす」

雫が目をぎゅっとつむると、新たな涙がぼろぼろとこぼれた。それでも彼女はこくんと力強く頷く。

「待ってる。私、ここで高晴さんを待ってるから」

俺は彼女の細い肢体を抱き締めた。

「愛してる、雫」
「私も高晴さんのこと愛してる」

雫は泣きながら言った。

「どんなに離れたって、この気持ちは変わらない。世界で一番、高晴さんが好きよ」

その晩、俺たちはベッドの中で何度も愛をささやき合った。互いの温もりを感じながら。



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