お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
「あ、別件。榊、今夜の忘年会参加でよかったよね」
「はい。参加しますよ」

高晴さんも今夜は職場の忘年会と言っていた。広報企画部に移ってから、休みが土日で被るようになったのが一番嬉しいことだ。明日は土曜日なので、ふたりで寝坊しても大丈夫。ベッドの中でのんびりしよう。


その晩は私もほどよくお酒を楽しみ、一次会で帰宅した。二次会にも誘われたけど、私には用事がある。
現在ハマっているアプリゲームの新シナリオが更新されたんだよねえ。どんなにリアル充実でも、趣味は別義にござる~!
高晴さんは遅そうだし、ゲームを楽しみながら待っていよう。

帰宅してシャワーを浴び、モコモコのルームウエアを着こみ、髪の毛はヘアターバンを巻いて乾かすのも後回し。早速アプリを起動。
ファンタジーの冒険もので、シナリオはフルボイスだし、キャラクターは男女ともに可愛いくて格好良くて◎。アイテムや強いキャラカードを手に入れるための課金システム、所謂ガチャは必須なんだけど、無料で回せることもあるし結構良心的な作りだわあ。
はあ、それにしてもこの男子キャラ、ジャスくんがめちゃくちゃ格好いい。声も贔屓声優の兆徹(きざしとおる)くんがやってるんだよねえ。はあ、スキスキスキ。こんな顔、高晴さんに見せられない。

高晴さんは私が二次元に恋していても、笑顔で見守ってくれる。私の話していることが八割わからなくても相槌を打ってくれ、気になるところは質問しコミュニケーションを絶やさない。オタクにとっては最良の夫。嫉妬なんかしない人。
だけど、このしまりなくにやついた顔を晒すのは、人として恥ずかしいというか。推しキャラの一挙手一投足で呻いたり叫んだり忙しいオタクとしましては、集中したいときはひとりがいいなあ。だから、新シナリオも会社の休憩時間や電車では我慢したのだ。

小一時間集中してシナリオやバトルを進め、ふうと顔をあげる。あら、気づいたら日付が変わってる。終電が出る時刻だ。そろそろ高晴さんも帰宅かな。それともタクシーかな。
髪の毛を乾かし直し、ようやくスキンケアに取り掛かりながら高晴さんを待つ。
高晴さんの職場は男性が多く、理系男子ばかりとはいえノリは体育会系。飲み会はそれなりにあり、高晴さんは付き合いだからと結構参加している。
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