お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
さらっと聞けばいいのに、聞けないのは私にも迷いがあるからなのだろう。
すぐに赤ちゃんを望まれたら、私はキャリアをあっさり中断できる?
赤ちゃんはほしくないって言われたらどうする?
高晴さんがまったく考えていなかった場合は?
……そして、本当のところ、私はどうしたいのだろうか。

***

十二月がやってきた。異動したてで毎日すったもんだ仕事をしている私にも、平等に年末はやってくる。広報企画部も例外なく忙しくなり、私は先輩たちの手伝いをしつつ自分が引き継いでもらった仕事にとりかかっている。新作のカタログ作りが目下のお仕事。
一方で、目の前にはちょっと気になる社員閲覧用の企画書が見える。来春のCMの計画で、もう撮影などなどは終わっているらしい。
ニケーは国内でも有数の女性下着メーカー。いつもスタイリッシュで可愛いCMを作っているなあと思っていたんだけど……。

「この企画、ナレーションを男性にお願いするんですね」

CM担当の先輩が隣の席なので尋ねる。斉藤さんという女性の先輩は頷いた。

「スポーティーなデザインでしょ。最近はジェンダーフリーの考え方もあって、いろんな人が手に取りやすい下着にしたいんだって」
「なるほど、いい考えです」

確かにボクサー型のパンツに機能的でシンプルなブラジャーは、性別を問わないデザインだと思う。色もオフホワイト、グレーやブルー、ブラックなどのラインナップ。
ひらひらした下着に抵抗のある女性もいるだろう。また男性だって、こういったデザインの下着を着てみたい人はいるかもしれない。多様な社会に向けた提案をしていけるっていいよね。

「年明けにアフレコがあるよ。榊もくる?」
「そうなんですか? 興味あります。行ってみたいなあ」
「じゃあ、スケジュール入れておいて」

卓上カレンダーと手帳にチェックを入れる。楽しみが増えた。長年仕事とは趣味のためのものだったけれど、最近は意欲的になってきたなあと感じる。結婚して以来、二次元だけでなく三次元にも楽しいことが増えたせいかもしれない。
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