秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 自宅に帰り着くと、やっと肩の力を抜くことができた。

「大雅、今回は本当にごめんなさい」

 父の言うまま広島まで行ってなければ、梨香の暴走も避けられただろう。

「千香のせいじゃないって言っただろ。俺としては、もしかしたら佐々木梨香と遭遇する可能性もあるかもしれないと予想したうえでのことだったから」

「え?」

 それは私も気にしていたが、大雅の話しぶりからするとまるで予めわかっていたようだ。

「向こうから広島へ来るように言ってきた以上、高確率で引き合わされるだろうと考えていた。ただ、事務所に後から姿を現すぐらいかと考えていた。それがまさか、公衆の面前でとは思わなかったな。多分、父親ですら想定外だったはず」

 言われてみれば、私たちを広島へ呼び寄せるなんてやっぱりおかしかった。
 大雅としては刀傷沙汰になる可能性も考えて警戒していたようだが、そこまでの事態にならなかったのだけは幸いだ。

「謝罪はここまで。それより、今後の話をしたいんだ」

 真面目な表情になる大雅に、わずかに緊張する。

「実は、またアメリカに来ないかって打診があった。結婚したばかりで幼い陽太もいるからって、一度は断ったんだけどね。でも、向こうの人間が俺を気に入ってくれてるみたいで、いつでもいいから来てほしいって引かないんだ」

 突然の報告に、驚きが隠せない。

 アメリカに行けば、私が今の仕事を続けられる保証はない。
 でも、家族の安全を考えれば、日本から離れるのは悪くない話だ。私も大雅も日常会話には困らないのだから、それほど難しい話でもないだろう。
 ころころと環境が変わるのは陽太にとって負担になるかもしれないけれど、異国の文化に触れさせてあげられるのはプラスにもなるはず。
< 162 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop