秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
予想外の妊娠
『真面目だね』

 これまで幾度となく言われてきた言葉で、私としてはその意味をマイナスに捉えがちだ。
 これまで髪を染めた経験もなければ、同世代の子が好んで着るような少し露出度の高い服を着たこともない。

 ナチュラルなメイクに、そのまま会社に出社もできてしまう無難な服装が標準装備で、学生時代は門限も律儀に守る堅苦しい生活をしてきた。
 自分でも、ずいぶん面白みのない生真面目な人間だと自覚している。

 そんな私が衝動的に家出をして、一夜限りの逢瀬も体験した。
 なんだかすっかり別人になった気持ちだったけれど、長年染みついたものは簡単には変わらないようだ。

 しばらくの間は、物珍しさから観光や贅沢でない程度のショッピングを楽しんでいた。
 でも、五日もそんな時間を過ごしていれば、こんなに遊んでばかりいていいのかと自責の念に駆られるようになっていく。

 一週間が経ってすっかり不安になっていた私は、早くも仕事と定住する部屋を探そうと動きはじめていた。
 
 そうして見つけたのが、得意の英語を生かした本の翻訳の仕事だった。
 取り引き先は小さな会社だったが、そこの関わった仕事の中には私が気に入っている本が何冊かあるとわかり、好みの系統なら楽しく仕事ができそうだとやる気に満ちている。
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