秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「あの晩、俺たちずいぶん酔ってたね?」

 私は大雅が来る前にすでに数杯飲んでいたし、その後も気の合う彼とのおしゃべりが楽しくて、口にしたアルコールはこれまでで一番多かった。
 彼だって、それなりの量を口にしていたはずだ。

「そうだね」

「とにかく千香を大事にしたくて、はやる気持ちを必死でこらえてた。避妊をしないとって、それも忘れていなかった。でも……」

 真正面から見据えられて、目が逸らせなくなる。
 きっと彼も私と同じようにあの晩を振り返り、避妊を怠った可能性に行き着いたのだろう。

「しなかったときも、あったよね?」

 一方的に責めるつもりはないが、彼の言葉を待ちきれなくてこちらから尋ねてしまう。その瞬間、後悔なのか申し訳なさなのか、大雅は表情を歪ませた。

 その反応は私にとって思いの外ショックが大きくて、眉間にしわを寄せる。

「千香、ごめん。あのとき、俺……」

「謝らないで」

 思わず鋭い声が出る。

「私は後悔なんてしてないわ。だから、謝らないで」

 ここで彼に謝罪されてしまえば、陽太を否定されるようで嫌だ。あの子は私にとって幸せの象徴で、決して過ちや後悔を想起させる存在ではない。

 こうしてて声を荒げてしまえば、陽太が大雅の子であると確信するだろうとわかっているのに、こみ上げてきた感情をどうしてもこらえられなかった。
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