秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 目的の店に到着すると、私たちの関係は一転して大雅が主導権を握った。
 私にベビーカーを返した大雅は、カートを押しながら一歩先を行く。手際よく食材を選ぶ姿に、慌てて声をかけた。

「ちょ、ちょっと大雅、待ってよ。まだ献立が決まってないわ」

「ああ、大丈夫。今夜は俺が腕を振るうから」

「え?」

 立ち止まった私に、大雅がいたずらっ子のような笑みを向けてくる。

「俺に任せて。千香の信頼を勝ち取るには、まず胃袋から攻めてみようかってね」

「料理、できるの?」

 首を傾げる私に、大雅がわざとらしく拗ねてみせる。

「当然。一人暮らし歴は長いからね」

 弁護士と言えば忙しそうなイメージだけど、それでも自炊をしていたなんてすごい。

「だから、ね。俺に任せて。ああ、陽太の分だけはどうすればいいのか教えてよ」

「う、うん」

 やる気になっている彼を止めるのも悪いかと、完全に任せることにした。
 陽太の食事内容に加えて私の好き嫌いも聞き出しながら、大雅は鼻歌でも歌い出しそうな様子で進んでいく。

「もちろん、居候させてもらうんだから食費は俺が持つからね」

 彼の勢いに押されて、その申し出も受け入れた。
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