秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 大雅の車には常時アウトドア用品が積まれているようで、到着するとテントを取り出していた。

「んー。気持ちいい」

 つい室内にこもりがちだっただけに、緑に囲まれたこの空間はずいぶん心地よく感じる。陽太も興味津々な様子で、一通りテントの中を探検し終えると外へ行こうと動き出した。

「ちょっと陽太に付き合ってくるから、千香はここで休んでてよ」

 昨日から大雅の子煩悩な一面を散々見せられていれば、任せても平気だろう。

「うん」

 足を伸ばして座りながら、手をつないだふたりを眺める。
 自分で歩きたがった陽太に合わせて長身をかがませる様はどうにも辛そうに見えるが、息子を見つめる大雅は常に笑みを浮かべている。

 時折しゃがみ込んでなにかをつつきながら、私から見える範囲を散歩する。
 そうして存分に動き回って満足したようで、最後は大雅に抱えられて戻ってきた。

「お昼にしようか」

 外で食べるランチは格別で、陽太にはこういう経験をあまりさせてあげられていなかったと反省する。いつもと違う環境につい気を取られていたが、時間をかけてしっかりと食べきっていた。

 その後、もうひと遊びして車に乗り込むと、陽太は動き出す前に寝入ってしまった。ぷっくりとした柔らかな頬を、大雅がツンとつつく。その様子を隣から見つめる。

「かわいいなあ」

 ふたりしてチャイルドシートで眠る我が子を覗き込んでいると、もぞもぞと手を動かした陽太は、眠りが浅かったのか大きなあくびをした。
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