攫い
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「なかなか難しいなぁ、現実味の無いモンを信じてもらうってのは」
冴が椅子の背を軋ませながらぐったりともたれかかる。
昼休み、空き教室。
開け放たれた窓が生温い風の通り道となり、私の前髪を揺らした。
4つの机をくっつけた状態でいつもどおりのお昼ご飯。
対面に座る冴の背後には、さえぎるもののない青空が広がっていた。
「まー無理もないよねー。おれたちだってはじめは冴の話なんか信じなかったし」
気だるげにミネラルウォーターを飲む優。
私と優は実際にこの目で唐獅子様を見ているので、信じるほかない立場だ。
祠の修復のあと、村の人たちに唐獅子様のことを伝えまわった冴と優。
しかし誰ひとりとしてまともに取り合ってくれなかったらしい。
都のお母さんも同じようなものだったし、案の定といったところ。
「根気強く広めていくしかないよ。唐獅子様の脅威からみんなを守れるのはいまのところ俺たちだけなんだから」
都の言葉にうなずく。
たとえ村のために必要な贄だとしても、好き放題暴れられては困る。
私たちがなにかを変えられるのなら、それをしない手はない。


