S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

「んんっ……! っはっ……!」

 やっと唇が離れた時、私はぜーぜーと肩で息をしていた。

(し、死ぬかと思ったぁ……!)

 涙目で要さんを見上げると、要さんは満足そうに微笑む。

「今度から、自分からもこうして」

 恥ずかしくて、私は要さんを睨みつけてしまう。
 そして、息がやっと落ち着いてきたときに、口を開いた。

「ま、前から思ってたんですけど、子どもを作る行為と、キス、何の関係あるんですかっ!」
「だから君の知識はマイナスだって、言っただろう」

 意味が分からない、と首を傾げると、要さんは苦笑する。

「キスに少しは慣れて来ただろう」
「そんなこと、ないです!」
「そうだね、いまだに顔を真っ赤にして、涙目になるし。まだまだだよね」

 少しバカにしたような口調に、カチンとくる。
 すると、また挑発するように、要さんは私の目を捉えた。

「悔しいなら、俺を納得させるくらいのキスは習得しないと」
「きょ、今日は、も、もういいです」
「だめだ」

 そう言って、また頬に触れられる。
 初めて、そんなことを言われて、私はぎょっとした。

 いつもは、これ以上のことはしないのに。これ以上、と言っても、これ以上のことがわからないだけにさらに動揺する。

 そんなことを考えていると、要さんは私の唇にそっと触れた。

「次は口開けて?」
「く、口?」

 予想外の言葉に眉を寄せると、要さんは当たり前のように頷く。

「うん、少しだけでいいから。舌も少し出せるといいな」
「え? こ、こうですか?」

 意味もわからず言われたままに小さく口を開ける。それに舌を出すことなんてないから、出そうとしても舌先が唇の先に出た程度だった。

 要さんはそんな私を見て、クスリと笑う。
 それから、いいね、と呟くと、そのまままた端正な顔が近づいてきた。
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