S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 そんな私を見て、槙野さんは楽しそうに笑う。

「随分、慕われてるのねぇ。要は」

(名前、呼び捨て。あの時と一緒)

 お似合いのカップルだと思ってた。
 今も二人並んだら、間違いなくお似合いのカップル。

 だけど……

『要』って、要さんのことを呼ぶそのキレイな声は、
 私の胸を、酷くいたぶる。

「あ、あの……本当にあの時も、それに今日も、ありがとうございました」

 かろうじてそれだけ告げて、私は夜の街をゆっくりと家まで帰った。
 今からどんな顔をして要さんに会えばいいのか、分からないまま。
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