S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 私のいる北条グループの中枢、北条ホールディングスの人事部は、他の会社の人事部の多くがそうであるように、採用だけでなく、育成も担当している。

 採用も研修も、「される側」だけでなく、「する側」もきちんと評価されるシステムで、研修を受けた社員や学生からの評価が悪ければ、次の異動では人事にいられないらしい、という噂を聞いた。

 人事部を離れるだけならまだしも、地方都市や工場に出向させられるパターンまで用意されているのだから、世界規模の大企業と言うのはこの目の前の男同様、食えない場所だと思う。

 私は顔を上げ、目の前の北条要部長の顔を見る。

 北条部長は、普段も口元だけ笑いは浮かべているが、目は全く笑ってない。しかし、私を前にすると、いつもより楽しそうに笑っている、ように見える。というかたぶんその予想は当たっている。

 思いっきり睨みつけたい衝動を抱えながら、こちらもある程度の場数は踏んできたつもりなので、どんな相手に対してもニコリとして見せた。

「はい、お任せください。部長」

 断る気はなかった。
 それがどんな案件で、どんな気持ちで差し出された仕事だろうと。

 そうは思うが、奥歯を噛み締めずにはいられなかった。
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