S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 席に戻ると、1年目に私の指導係をしてくれていた三堂美晴さんが、私の右隣の席から私の手の中の書類を見る。

「え、あの研修の講師、七瀬さんが探すことになったの⁉」
「はい、とにかく頑張って探してみます」
「私、手伝うよ」
「俺も手伝う」

 左隣の5つ上の如月隼人さんも顔を出して言う。
 しかし、私は、二人の優しい言葉に笑顔で首を横に振った。

「本当に困ったら頼らせてください。それまで自分で頑張ってみます。あ、でも一つだけ三堂さんにお願いが。申し訳ないですが、歴代の講師リストと研修内容のありかを聞いてもいいですか? できれば今は講師をしていない方も含めて入っているものがいいのですが……」
「ファイルの場所送るわね」

 そう言ってから三堂さんはちらりと目をパソコンに向けてマウスを操作しながら続けた。

「それにしても、ほんと、七瀬さんすごいわ。仕事できないように見えて結構こなしてるし」
「できないように見えてって……」
「だって、よく取引先にも学生だっていまだに間違われてる童顔だし、『仕事できます』って風には見えないよ」
「それ、結構気にしてるんですよ……? メール来ました。ありがとうございます」

 私はパソコンに向かって、ファイルを開く。上からざっと見降ろして、その中で今回の研修のテーマにそぐっていそうな人を数人ピックアップして、声掛け専用のファイルに落とした。
 その時、如月さんが北条部長をチラリと見て口を開いた。

「北条部長、ここに異動してきて一年。やり手って聞いてたし、確かにやり手だけど……なんていうか、仕事のやり方が前の部長と全然違いすぎるよな」
「前の松岡部長は自分が全部決めてやりたいタイプだったしね。でも、北条部長の方が、部下を信頼してくれてる気はするし、私は嫌いじゃない。本当に難しいときは、さりげなくフォローしてくれてるし」

 三堂さんがそう返す。それにまた如月さんが少し不満を込めた口調で言った。

「まぁ、それもそうだけど……なんか俺は違和感あるなぁ。特に七瀬に対しての仕事の振り方とか。最初2年目だったのに無茶振りばかりだったし」

 私はある程度これからの方向を決めると、ぐるりと二人の方を向いて微笑んだ。
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