S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 会長は息を吐くと、低い声で話し出した。

「あの見合いはいろはが不審に思わないためだ。通常、この年齢になればうちくらいの規模の会社の子女は見合いをさせるからな。しかし、いろは自身に結婚する気がないなら、私はその気持ちを優先させてやりたい。だから、言えば簡単にあちらから断ってくれる相手としか見合いをさせていない」
「……え?」

 それは思ってもない回答だった。
 自分が知っていたのも、いろはから『まだ結婚したくない。仕事をしたい』と言って相手に見合いを断るように伝えている、という情報だけだったから。

「私はいろはを結婚させる気はまだないんだ。まだ手元に置いておきたい。いろははまだ何も知らないし、まだ知ってほしくはない」

 この人は、いろはの前では厳しく見せているが、いろはのことが大事でかわいくて仕方ないのだろう。

 つまりはそういうことだ。

「……そうでしたか。案外……ジジバカだったんですね」

 思わずそう言っていた。
 すると、恋敵でも睨むように、会長はキッと俺を睨みつける。
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