君が望むなら…
そして、ある日突然それは起きた。

「っ!?…いやあぁぁ!!」

夜中に抜け出した私を、暗がりから男の腕が捕まえた。

私は彼の名を無意識に呼びかけ、気付き止めた。

来るはずがない。
それにこれは自業自得。誰にも秘密で身勝手に、私は屋敷を出ていたのだから…


そしてあっという間。
私の身は散らされ、残ったのは引き裂かれた服を纏い、初めての喪失感と痛みで呆然としている私だけだった。

「っ、遅かった!!アネア…!!」

息を切らした彼が茂みのそばに倒れ込んでいる私を見つける。

なぜ彼がここにいるのだろう…?

「なぜ僕は今日に限って、君をすぐに付けなかったんだ…!そして見失うなんて…!!アネア…ごめんよ……」

私を抱き起こし涙を流しながら謝罪する彼に、私の口からはまるで操り人形に言わせた言葉のようにそれは出てきた。

「…良かったですわね、貴方。これでもう、私が貴方のもとにいる理由は無くなりました……」

これが本心からなのかももう分からない。
ただ私は早くこの状況から、今の気分から開放されたかった。
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