白蛇と猟師
またある日も、森にやってきた猟師のすぐ後をつける蛇。猟師はすぐに気付く。

「…お前、この前にも見た蛇だな?本当にどうした?俺は餌なんか持っていないぞ?それとも、俺が喰いたいのか?」

すると蛇は突然、人間の言葉で口を利いた。

『私は今まで、他の者の命をむやみに取ってきました。空腹でも無いのに命を奪った相手もいました…。あなたは猟師、どうか私を獲り、罰を与えてください…』

蛇は悲しげに頭を垂れ、そう言った。

これには呆気に取られた猟師。
言葉を話しだしただけでなく、今までの自分の行いを悔いるとは。

「…お前は蛇だ。動くものに絡みつき締めようとする。お前がいかに容姿が良くとも、だ。それは何もおかしい事はない。そのことに罪悪感とは、なんとも慈悲深いというか…。しかしな、それは俺に願うことじゃない。俺がお前を罰するのは間違いだ。」

『…では私はもう、この湖のように清らかに生き直すことは……』

聞いた蛇はそう言って小さな涙の粒を零し、さめざめと泣いた。
これには気の毒に思った猟師。

「自分でそう思っただけでも立派なことじゃないか。これからは無駄な殺生をせずだ。…俺も肝に銘じないとな。」

蛇を慰めるようにそう言うと、銃を担ぎ、今日は何も獲らずに森を出て行こうとする。

『こうして出逢えたのも何かの縁。私を連れて行ってくれませんか?…お願いです、役に立ちたいんです』

蛇の突然な申し出に猟師は困ったように笑ったが、蛇はじっとつぶらな瞳で猟師を見つめ返した。


猟師は仕方なく、蛇を連れて森を出た。
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