楽園 ~きみのいる場所~
「あっ……、はぁ……ぁ……」
もっと感じさせたい。
もっと乱れさせたい。
もっと、もっと。
次第に、スウェットが押し上げられる窮屈さを感じ、もしかしたらと期待する。
楽の腰を抱き、膝の上に乗せた。
片足を持ち上げ、大きく外側に開く。
「ひゃ――」
小さく声を上げ、楽が膝から降りようと前のめりになる。が、俺はそれを許さい。
「やぁっ……あ、ん!」
鼻にかかった甘い嬌声が、脳を刺激する。
もっと、聞きたい。
「幸せだろうな」
「……しあわ……せ?」
「うん。楽と一つになれたら、幸せだよ」
彼女の背中に額を押し付ける。
「楽を、幸せにしたい」
ロマンティックな言葉とは裏腹に、耳を刺激するには卑猥な水音。
「楽と、幸せになりたい」
「私も……」と、楽が絞り出すように言った。
「私も、悠久を幸せにしてあげたい。……悠久と幸せになりたい」
そう言った楽の手が、スウェット越しに俺に触れる。
包み込むように撫で、くすぐるようになぞる。
「二人で幸せになろうな」
目を閉じ、彼女の手の温かさに神経を集中する。
「絶対、幸せになろうな」
俺の身体は回復しつつある。
楽と同じベッドで眠ると、楽に触れると、確かに反応する。
焦りはある。
楽と繋がりたい欲望と、楽を繋ぎ止めておきたい願望。
「楽……」
彼女の身体が弓なりにしなる。
「気持ちいい?」
「ん……っ」
「前の――」と言いかけて、ひゅっと言葉を飲み込んだ。
誰と張り合うつもりだよ!
「――こん……なの……知らない」
「え?」
「こっ、んな……こと、シた……ことないっ」
楽が、快感に抗うように太腿に力を込めて、膝を曲げる。
腰が揺れ、徐々に足が開いていく。
悶える楽を正面から見られないのは、なんとも残念だ。
楽が息を飲む。
文字通り、飲み込んだ。
それから、恐らく恥ずかしがってだろう。彼女は小さく首を振った。
緩い輪っかが彼女の髪を滑り落ちて来た。
胸に触れていた手を離し、かろうじて引っ掛かっていたヘアゴムを彼女の髪の束から引き抜いた。
黒髪がハラハラと散り、彼女の背中で踊る。
俺は髪で見えなくなった彼女のうなじに顔を埋めた。
「やっと、解けた……」
十五年前に、即答で拒否られたことを思い出し、思わず笑みがこぼれる。
「やっと……だ」
「はる……か?」
「もう、離さない……」
俺は両手でしっかりと愛しい恋人の肩を抱いた。