叶わぬ恋だと分かっていても
正直すぎる嘘つき
 お昼休み。

 男性ばかりの職場で、ひとり大人しく自席でお弁当を食べていたら、携帯に知らない番号からの着信。
 いそいそとお弁当箱にフタをして席を立つと、廊下で恐る恐る電話に出る。

戸倉(とくら)さん、緒川(おがわ)だけど分かるかな?』

 相手は、前に同じ班で働いていた年上の男性だった。

『急に連絡してごめんね。えっと――突然なんだけどさ。明日の昼休み、俺の車が停めてある駐車場まで出てきてもらえない……?』

 会計年度任用職員――いわゆる市役所の臨時職員――として働く私は、ひとところに長くいられない。
 ひと月ちょっと前に配置換えがあって、私、今は緒川さんのいる都市開発課とは違う課――下水道課――に配属になっている。

 当然その時点で電話の彼――緒川さんとの接点も皆無になったはずで。

 半年間お世話になった都市開発課を去るときに、くだんの緒川さん(かれ)も含めた同じ班――公園みどり班――の皆さんから、お別れ会を盛大にして頂いて、可愛い花束までプレゼントされたのだ。

 なのに。
 あれから1ヶ月も経とうという頃になって……今更何の用だろう?

 緒川さん、無口でちょっぴり怖いなって思っていた人で、正直同じ班にいた時にもそれほど接点はなかったはず。

 そう思いはしたけれど、打ち解けていなかったが故に、そんな年上男性からの呼び出しを断れるほど、私はまだ世渡りが上手くなかったから。


「……わかりました」


 よく分からないままにそう返事をしてしまって……約束の日時。


 指定された駐車場に出向いた私を、車の中に(いざな)うなり抱きしめて、緒川さんが言った。


「今日は俺の誕生日なんだ」
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