剣と涙〜悲しみの連鎖を断ち切って〜
猫間家の屋敷
八月下旬、蝉が大合唱をする中、神社の一人娘である神条沙月(しんじょうさつき)は、巫女の衣装を着てほうきを手に掃除をする。額に汗が浮かび、地面に落ちていった。

「暑……」

今日は全国的に最高気温になると昨日の天気予報で言っていた。ムワリとした熱のせいか、神社にお参りに来る人はいつもよりずっと少ない。

「おい」

汗を軽く拭った後に掃除を再開しようとした沙月だが、ほうきを何者かを取り上げられる。沙月が横を見れば、同居している恋人の宮野葉月(みやのはづき)がいた。

「いい加減家の中に入れよ。熱中症になるぞ。掃除はもう少し後でも大丈夫だろ」

お前に倒れられたら、と話しながら葉月の頬は赤くなっていく。心配してくれていることに沙月は胸を高鳴らせながら、「そうだね。掃除は夕方にしようかな」と言った。

「心配してくれてありがとう」

「お前に倒れられたら、お前の家族だけじゃなくてあいつらも心配するだろ。だから言ったんだよ」
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