剣と涙〜悲しみの連鎖を断ち切って〜
新たな任務
一方その頃、死神として密かに活動している星川瑠依(ほしかわるい)は、アルバイト先のサーカス団にいた。夏休みや冬休みの時期などは、サーカス団は大忙しである。

顔は白く塗られ、派手なピエロの衣装を見に纏った瑠依はスポットライトが照らすステージへと姿を表す。夏休みのため、大勢の家族連れで客席は賑わっていた。その中に、同じ死神である八神紫乃(やがみしの)の姿を見つけた時、瑠依の胸はトクンと音を立てた。

瑠依がボールを三つ取り出し、ジャグリングを始めると客席から子どもたちの楽しそうな声が響いてくる。移動しながらジャグリングをしていくと、歓声と拍手が上がる。紫乃も微笑んで見つめてくれる。

(何か、照れ臭いな……)

瑠依はそう思いながらお辞儀をし、ステージから姿を消す。だが、これで仕事が終わったわけではない。次のマジックの準備をしなくてはならないのだ。

(紫乃、また僕を見てくれるかな)

何故、こんなにも紫乃のことを考えると胸が高鳴るのか、その意味など知らぬまま瑠依は準備を進めるのだった。
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