剣と涙〜悲しみの連鎖を断ち切って〜
つららの体は、まるで雪のように冷たい。雪女の妹だからだ。

「涼しい?」

ジッと沙月を見上げてつららは訊ねる。沙月が「一気に涼しくなったよ」と返すと、ピンク色の着物に桜の髪飾りをつけた女の子ーーー桜姫が姿を見せる。

「おかえりなさい、沙月。シャワー浴びて来たら?さっぱりするよ」

「ありがとう、そうする」

この家は賑やかだ。人間と妖が共に暮らしているため、笑いが絶えない。沙月がお風呂場へ向かうために廊下を歩いていると、襖が開いて座敷わらしの双子の男女が飛び出してくる。

「沙月〜!あとで一緒にゲームしたいです!」

「隠れんぼもやりたいです!」

「春太郎、幸子、シャワー浴びたらすぐに行くから部屋で待っててね」

沙月がしゃがんで二人の頭を撫でると、二人は嬉しそうに目を細める。沙月よりも長く生きているのだが、その無邪気な性格や笑顔は子どもと変わらない。

お風呂場に入ろうとした刹那、「沙月」と声をかけられる。振り返れば、そこには雪女のお雪が立っていた。白い着物を着た美しい女性である。
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