剣と涙〜悲しみの連鎖を断ち切って〜
暴力によって命を奪われ、無理やりこの場所に縛り付けられた零たちに、刀やお札による攻撃的な除霊は効果がないのだ。霊たちが望んでいたのは、心安らかに旅立つことだったのだから……。

「無事に、全員あの世へ行けたみたいだな」

葉月が呟き、紫乃が「任務完了だね!」と微笑む。その横顔は儚く、だが美しい。

大勢の魂が救われた夜、空に浮かぶ星たちは宝石のように煌めいていた。



猫間家の屋敷の悪霊たちを除霊してから数週間が経った。沙月たちは学校が始まり、学校に除霊と忙しい日々を送っている。

猫間家に入って行方不明になっていた人たちは、警察が捜査したところ屋敷の一番奥の部屋に何故かいたらしい。そして、屋敷で体験したことは全て忘れてしまっていたそうだ。

「沙月、早くしないと映画始まるぞ」

「わわっ!ごめん!今日は二人きりじゃないから、のんびりしてられないよね」

休日、沙月と葉月は二人並んで家を出る。これから映画を観に行くのだ。二人きりではなく、瑠依と紫乃と菫もいる。

「任務の話、色々聞かせてもらいたいな!」

そう話す沙月の頬を、まだ暑い風が撫でて行った。
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