全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「及川さんまで巻き添えで店舗勤務になってしまって……申し訳ないです」


 メモを取りながら話し合っていると、急に道長くんが暗い顔をして頭を下げる。
 私はわけがわからないながらも、理由を問いたくて彼に穏やかな視線を向けた。


「どうして謝るの。私の異動は道長くんのせいじゃないでしょう?」


 私を飛ばす目的で、売上実績がどうのと会社側が理由を後付けしてきたのだとしたら、巻き添えにしたのは完全に私のほうだ。
 だから道長くんが謝る必要はまったくないのに……。今のはいったいどういう意味だろう?


「営業部の中で俺がこの商品を一番売ってなかったんです。俺を飛ばすためにそれを口実にしただけです。及川さんに責任はありません。ただの巻き添えです」

「口実にしたって……誰の話?」

「山路本部長ですよ」


 彼は彼で誤解しているようで、言っている内容をすぐに理解できない私は頭が混乱してくる。


「待って。本部長が道長くんを異動させるために仕組んだ、ってこと?」

「はい」

「どうして?」


 社内不倫の噂を一掃するため、駿二郎は私を追い払いたかったのだと勝手に思っていたが……。
 それは考えすぎで、本当の狙いは道長くんだったのだろうか。
 いや、だとしても、私を異動させたのも駿二郎だし、そこには個人的な感情が絶対に含まれているはずだ。

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