雪のとなりに、春。
息を止めていても苦しくない。
熱っぽい瞳に私が映ってる。

心臓の音がうるさいはずなのに、とても静かで。


「……」


何も言えない。
言っちゃいけない。

気付けば、雪杜くんの首に腕を伸ばしていた。

雪杜くんも、反対の手を私の背中にまわして、すっかり彼の熱に包まれる。


ああ、好きだな。


そう思って目を閉じた。


――……ガチャ


……ん?
今、玄関の方でドアが開けられる音がしたような……?


――ドタドタ……ッ


「な、なんか足音が聞こえる気がするんだけど……っ!?」


待って、待って。
これ、ついこの間も同じような展開だったよね!?

どちらからともなく絡めていた腕を離しては、ドアの方を見やる。


――ガチャッ


程なくしてリビングのドアが開かれた。


「奈冷!!」

「!?」


姿を現したのは、綺麗な黒髪の大人の女性。

そして、そのすぐ後から淡い青色に染まった髪の毛の男性がひょっこり顔を出した。
紺色の吸い込まれそうな瞳は、雪杜くんにそっくりだ。


「雪杜くん、もしかしてこの方々は……」


私の方をちらっと見た雪杜くんは、困ったように、複雑そうに、小さくため息をついた。

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