雪のとなりに、春。
4 それはさっきも聞いた
*花暖side*


「カノ、お前結局なんて書いたんだよ?」


放課後を告げるチャイムが鳴って、それと同時に前の席に座っている信濃くんがくるりと振り返って聞いてきた。
隣から環くんの視線も向けられている。

高校3年生。
わかってはいたけど、いざこうして用紙に記入するとなると自分のことをきちんと考えなければいけないんだと実感する。

他の人からしたら遅いと言われるだろうけど、私みたいにあんまり考えられていない人だって周りにいるはずだ。

そう、たとえば目の前にいる信濃くんとか。


「し、信濃くんこそ、なんて書いたの?」

「俺普通に大学志望したけど」

「えっ」


さも当たり前のように言う彼が信じられない。
一緒にテスト勉強したときに暗記パンの作り方を調べていたあの信濃くんが、大学……!?


「まあ、環とユキメ後輩がいれば勉強もなんとかなんだろー」


人の力を借りる気満々の様子に、隣から大きくため息が聞こえた。
そんな環くんは、もちろん芸術センスを生かせる大学に進学するということは分かってる。


「カノは進学? 就職? なんかどっちもしっくりこないな、バカだし」

「信濃くんにバカって言われたくないよっ」

「そうだぞカノー。卒業したら俺らは傍にいないんだぞー」


ふざけて言った環くんの言葉がいやに刺さる。


「やりたいこととかねーの?」

「う、ん……まだ全然……」


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