離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「忍くんも気をつけたほうがいいぞ。若い女を妻にして浮かれていたら、あっという間に散財されてほかに男を作って逃げ出されるに決まってる」
 
 内田部長がそう言い終わると同時に、隣に立つ忍さんが声を上げて笑った。
 
 私も内田部長も、驚いて彼を見る。
 
 忍さんは愉快そうに肩を揺らしてから一度息を吐き、綺麗な笑みを浮かべた。
 
「さすが、経験者の言葉は重みが違いますね」
 
 経験者……?と私は首をかしげる。
 
「部長は昨年ひと周り年下の奥様と離婚したばかりでしたよね。離婚届一枚残して姿を消した奥様を探し出すのに、相当苦労されたとか」
 
 忍さんに冷たい視線を向けられ、部長の顔色が変わった。
 
「奥様が離婚を決意したのは、家庭を一切顧みず横暴な態度をとる部長に嫌気がさしたからだそうですね」
「そ、それは……」
 
 淡々と続けられ、部長の唇がわなわなと震えだす。
 
「ご忠告ありがとうございます。ですが、妻は私にはもったいないほど聡明で魅力的な女性です。部長のように簡単に離したりはしませんので、ご心配なく」
 
 忍さんは私の肩を抱き、悠然とそう言った。
 
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