離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「話は聞いてるよ。一ノ瀬議員の娘さんなんだってね。どうせ小さな頃から贅沢な暮らしをしてきたんだろう」
 
 見下すような表情を浮かべ、大声でそう言った。
 
「いいねぇ。そんな綺麗な顔で金持ちの家に生まれて。なんの苦労もせず生きられるなんて、本当にうらやましい」
 
 明らかに私を傷つけようとする言葉を、視線を落として受け止める。
 
 人より恵まれた環境に生まれたことは、自分でも自覚してる。
 
 世間知らずでまだまだ未熟者だってことも、ちゃんとわかってる。
 
 こんなことを言われたくらいで、いちいち傷ついたりしない。
 
「内田部長」
 
 騒ぎに気づいた岩木さんが、諫めるように名前を呼んだ。
 
 けれど内田部長は興奮してきたのか、さらに語気を強める。
 
「忍くんみたいな冷血でつまらない男に嫁ぐなんて、どうせ上條家の地位と財産が狙いなんだろ?」
「そんなことは……っ」
 
 自分はなにを言われてもいいけれど、忍さんを貶められると平常心ではいられなくて思わず眉をひそめた。
 
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