離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「そう。じゃあ飲み物だけにしましょうね。なにがいいかしら」
「ええと……」と少し考える。
 
 妊娠しているとしたらカフェインは避けたほうがいいんだよね。
 となると、コーヒーも紅茶も緑茶もだめで……。
 
 たしか、ハーブティーも種類によってはよくないと聞いた覚えがある。

 そう考えて、妊娠に対しておぼろげな知識しか持っていないことに気づく。 
 
 もう二十四歳の立派な大人なのに、無知な自分が情けなくなる。
 
「そうだ。しょうがを入れた葛湯がいいわ! それならカフェインも入ってないし、胃にも優しいから」
 
 そう言われ、驚いて顔を上げる。
 
 どうしてカフェインを避けているってわかったんだろう。
 
「亡くなった奥様が琴子ちゃんを妊娠しているときも、よく葛湯を作ってあげたんですよ」
 
 千絵さんは私を安心させるように、優しい声で言った。
 
「琴子ちゃん、妊娠しているのね」
「……っ」
 
 彼女の鋭さに喉をつまらせる。
 
 自分で事情を話そうとは思っていたけど、こんなに簡単に見抜かれるとは思わなかった。
 
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