離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 大企業の御曹司という恵まれた環境にあぐらをかかず努力を重ねてきた彼は、どんな状況に陥っても困難を乗り越えてやるんだという強い意志を持っているんだろう。
 
 凛と胸を張り私を幸せにすると宣言してくれた忍さんがかっこよくて、涙がこみあげてくる。
 
「忍さん……」
 
 私が壁のうしろから姿を見せると、忍さんが「琴子!」と声をあげる。
 
 彼に駆け寄ろうとして、くらりと目の前が暗くなった。
 
「琴子!?」
 
 まるで水中にもぐったかのように私の名前を呼ぶ声が遠くなる。
 
「医者を、救急車を……!」
 
 みんなの慌てる声を聞きながら、私はその場にうずくまった。
 


 


「アレルギーですね」
 
 白衣を着た医師が、私を見ながらそう言った。
 
「アレルギー?」
 
 診察室にいる私も忍さんもそして父も、きょとんとして繰り返す。
 
「はい。このおう吐はアレルギー反応ですね。じんましんも出てますし、間違いないかと。なにか普段食べないものを口にしませんでしたか?」
 
 そう言われ、「もしかして」と思い当たる。
 
「ザクロをたくさん食べました」
 
< 155 / 179 >

この作品をシェア

pagetop