離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
『私のミスでスマホを忘れたのに社まで届けてもらいたいなんて、図々しいにもほどがありますよね。本当に失礼いたしました』
「あ、いえ! 図々しいなんて思っていないです」
『本当ですか?』
「もちろんです。もとはと言えば、私が忙しい岩木さんを引き留めてしまったからですし……」
『そう言っていただけて本当にありがたいです。では届けていただけるんですね』
 
 声だけでも岩木さんがにっこりと笑ったのが伝わってきた。
 
「え? あの、でも……!」
『それではよろしくお願いいたします』
 
 私の言葉を遮るように一方的に言うと、通話は切れてしまった。
 
 暗くなった画面を見下ろし、どうしてこうなったんだろうと困惑する。
 
 岩木さんは物腰が柔らかく紳士的なのに、時々ものすごく押しが強い。
 
 会社まで行くつもりはなかったのに、気づけば了承してしまっていた。

 

 マンションのコンシェルジュに頼んでタクシーを呼んでもらう。 
 
 到着したタクシーに乗り込み『上條不動産の本社へ』とお願いすると、住所の確認もせずすぐに『わかりました』とうなずいてくれた。
 
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