不倫彼氏とデートした夜、交通事故に遭ったら、出逢う前に戻っていました。
入り口にスーツ姿のマッキーが現れると、目眩のような、気が遠のくような感覚に襲われた。

スマホの時刻は18:35。

紗智と待ち合わせたのはここから2駅先で、18:30。

すぐに『3、40分位、遅れるかも』とLINEし、マッキーがオーダーした飲み物を持って席に着くのを待ち、座ったところで私は立ち上がった。

宙を歩くような気分で歩を進め、マッキーの前に行くと「大和先生、ですよね」と声を掛けた。

マッキーは特に驚く様子もなく、いつもの綺麗な顔で「ご面識、ありましたか?」と言い、微笑んだ。

「すみません。名乗りもせず声をお掛けしてしまって。私は4年前、大和先生に教えて頂いた澤村紗智の姉、澤村玲奈です」

マッキーの目が一瞬輝いたように見えた。

「あの時期、留学していましたので、お会いしたことは無かったのですけど、妹からのLINEで写真を見せてもらいました。まだ合格のお礼を言えていなかったので、驚かれるのを承知で伺いました」

マッキーの形のいい唇が、なお一層の微笑みを作る。

「妹のこと、どうもありがとうございます。お陰で楽しい大学生活を送っています」

何度も練習した台詞を淀みなく言い、私は頭を下げた。

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