婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「すごくいい人でした。オシャレなイタリアンに連れてって下さって。仕事熱心な感じも伝わってきましたし。でも……」

無骨そうな雰囲気の外見とは裏腹に、とても繊細な優しさを見せる人だった。

終始気を使ってくれていたし、嫌な思いをすることなく食事を終えられた。

だけど、それ以上の報告を彩佳先輩にすることは出来そうにない。

先を続けられず言葉を途切れさせた私を見て、先輩はなにか察したような顔で微笑む。

「その様子じゃ、大内くんではなかったみたいね。霧崎さんの運命のお相手は」
「え?」
「私ね、女性はみんな、出会ってすぐに男性を判別できると思うの。その人と恋愛が出来るのかどうかって」

首を傾げた私に、先輩は魅惑的に目を細めた。

「私の結婚相手とされていた人もね、すごく素敵な男性だった。エリート外交官で、ルックスも抜群。祖父も父も気に入ってたし、実際私も写真を見て驚いたくらい整ったお顔立ちだったの」

この美貌を湛える彩佳先輩が絶賛するくらいなのだ、さぞイケメンだったんだろうと想像する。

「だけど、違うなって思ったの。この人とは恋愛出来ないなって。きっと私の心の中に、すでに今の主人がいたからなんだと思う」

どれだけ魅力的な人だとしても、恋愛感情を持てるかどうかは別だということ。

話に頷きながら巨峰サワーで喉を潤していると、先輩が伺うような視線を向けてきた。

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