婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「さすがにひと月は無理だけど、今週は休みが取れた。その後は定時に帰れるようにするから」
「ありがとう。でも忙しいんだし、無理しないでね」
「無理はしてない。出来る限り陽菜と一緒にさくらの成長を見守りたいんだ。もちろん、仕事も疎かにはしない。やりたいことはまだまだあるしな」

そう言って瞳を輝かせる怜士の脳裏は、次なる事業のことでいっぱいなのだろう。

楽しそうに仕事の展望を語る彼は、私にはじめて恋心を教えてくれた頃の彼とまったく変わっていない。

「次は通信教材とタブレット学習だな。さくらが楽しいって思えるものを作るからな」

彼の腕の中ですやすやと小さな寝息を立てている娘に話しかけている怜士を見つめると、胸の奥から愛しさが泉のように際限なく湧いてくる。

いつか、さくらが『ひなクラス』に通う日が来たりするのだろうか。

「帰ろうか、陽菜。俺たちの家に」
「うん」

そんな日が来たら、彼女に教えてあげたいと思う。

さくらの名前に込められた、パパとママの初恋の物語を。



end
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