婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

今日は早朝保育の担当のため、朝六時半には園に着き、エプロンを付けて準備する。

出社するために早い時間に来る保護者から子供を預かり、七時には保育開始。

「ひな先生、おはようございます!」
「さきちゃん、おはよう。今日も元気いっぱいだね」
「先生、今日のうた『あめふりくまのこ』がいい!」
「そうだね、じゃあしんじ君のリクエストに応えようかな」
「やったー!」

子供たちとコミュニケーションを取りながら、挨拶する声はいつもと変わりないか、具合が悪そうにしていないかなど、ひとりひとり健康状態をチェックする。

六月は急に暑くなったり雨で冷えたりと寒暖の差が激しく、大人でも体調を崩しやすい。

子供たちはうまく自分の不調を訴えられないので、小さな異変も見逃さないように気を配るのも、保育士の仕事のひとつだ。

「おはようございます、陽菜先生」
「野田さん、おはようございます。まりあちゃん、おはよう」
「……おはよう」

俯きながらも挨拶を返してくれたのは、私のクラスの野田まりあちゃん。

恥ずかしがり屋さんだけど周りのことをよく見ていて、よく言えば空気を読める優しい女の子。

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