婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

だけど幼い子供にしては、大人の顔色を伺っている節があると心配している。

彼女は去年の九月にこの保育園に転園してきた。

理由は、ご両親の離婚。
野田さんはシングルファザーとして、まりあちゃんを育てている。

いまどき離婚は珍しくないとはいえ、まだ五歳の子供にとって、母親がいなくなったことへの心のケアは必要だと思い、転園当初から気にかけていた。

まりあちゃんのお父さんもひとりでの育児に戸惑いが大きそうで、なにかと園に相談にくる機会が多かったのだけど……。

実はそれが最近、悩みの種のひとつだったりする。

「陽菜先生、今少しいいですか?」
「はい?」
「まりあの昨日の様子なんですが、ちょっと気になることがあって」

朝、園に子供を預ける際に、ちょっとした相談事を話す保護者の方は少なくない。

昨日もばら組のママから、『お友達と喧嘩したらしいのだけど、詳しいことを話してくれないんです。娘と関わる時間が少ないせいで、母親として信頼されてないんでしょうか』と相談されたばかり。

保育園は共働きの保護者が多く、特にフルタイムで働くママは、長時間子供を預けることに罪悪感を覚えている人もいる。

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