男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
 ラビは足早に家に入ると、大きなノエルをぎゅっと抱きしめた。

 柔らかい毛並みの暖かさに顔をすり寄せて、彼の呼吸や、心臓が脈打つのを感じて自分を落ち着ける。ノエルは、昔からラビにしか見えない秘密の友達だった。

 物心ついた頃から、一人と一匹は共に過ごしてきたのだ。

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 金色の悪魔、と呼ばれている有名なお伽噺がある。彼らは家畜や人を襲って血を啜り、多くの不幸を呼び込む人の姿をした悪魔のような何かなのだとして、その物語に登場していた悪役だった。

 物語の他に、有名な迷信話も広く伝えられている。例えば有名な話だと、金色の色素を持った子共は悪魔が迎えにやってくるので、その一族は不幸になるだとか、災害が起こって多くの人間が死ぬ先触れだと嫌われていた。

 ラビの両親は共に鳶色の髪と目をしていたが、ラビは産まれた時から髪も目も見事な金色だった。家名をオーディンと言い、彼女の両親であるオーディン夫妻は、ラビが産まれた年、隣町からホノワ村へ引っ越してきた薬師だった。

 共に薬師であったオーディン夫妻は、金色の色素を持った子供の両親として村人からは距離を置かれたが、薬師としての腕と人の良さを受け止めてくれる人もいた。

 特に、ホノワ村の土地を所有し、そこの別荘に滞在していたヒューガノーズ伯爵と伯爵夫人は、若きオーディン夫妻を良き友人として接した。伯爵には二人の子どもがいたが、彼らも自分達の親を見習ってか、金髪金目のラビを毛嫌いしなかった。

 オーディン夫妻が不慮の事故で亡くなってすぐ、生き残った九歳のラビの世話を買って出たのも、ヒューガノーズ伯爵だった。
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