あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

誰にでも、自分の汚い部分を知る瞬間があるのだと思う。


人間は完璧じゃないし、弱い、汚い部分がない人なんていない。


だけど、この時に感じた罪悪感は、まだ子供だった私には大きすぎる戒めだった。



それ以来、私は、あの人の目を見ていない。


父とも、母とも、目を見合わせることができない。



飾られた、伯母の写真とも。



目を見合わせると、醜い自分の願いが見透かされてしまいそうで。



私は、あれから一度も、大事に思っていた人の顔を、まっすぐに見られずにいる。

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