あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
そして、私はいろんな人を好きになろうとして来たけれど。
願いは叶わないまま、今に至る。
あの人が消えないまま、誰かを好きになろうと頑張って……好きになれずに責められる。
私が悪い、と。
あんな気持ちを抱くなんて、と。
何度も何度も、責められているような気分。
誰も知りはしないけれど、多分、みんなが知っている。
私の中に、誰かがいること。
私が、その人を、他の誰よりも好きだということ。
誰かを好きになろう、と、あの人を忘れよう、と、いくら頑張ってもダメ。
それならもう……どうにでもなれ!
目の前の門に手をかけて、私はあの時に止めた足を、今度は引っ込めずに踏み出した。
キイ、と古い門が軋むような音をたて、あの人が振り返った。
紗良、と。
その口が、私の名前の形に動いたと思った瞬間。
バシャッ!と、私は頭から水を浴びせかけられた。