あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう
「……っ!!」
「ああっ!ごめんっ!」
慌てたような声は、記憶にあるものと同じ。
前髪から落ちる雫の向こうで、手にしていたホースを投げ出し、駆け寄ってくる、ひょろりとした姿も、あの頃と同じで……
びしょ濡れになった驚きも、息をするのも忘れて、私はその姿を見つめていた。
やっと、やっと会えた…
目の奥に熱い塊が盛り上がってきて……私はかけられた冷たい水と一緒に、溢れた熱い雫を拭う。
「大丈夫?!」
目の前に立った長身の影が落ちて、まだ顔を上げられない私のびしょ濡れの肩に小さめのタオルが当てられた。
「その、水やりして……ぼーっとしてたから、びっくりしちゃって、本当にごめん」
「あ、いえ……」
震える声に、気づかれないことを祈りながら、私は意を決して顔を上げた。
優しく細められる目。
何年も……本当に、もう何年も会っていなかったというのに。
その目を見つめただけで、私の胸はきゅうっと、あの時のように締め付けられる。